定義と戻り値
関数はfuncキーワードで定義します。名前、引数、戻り値の型を書き、returnで値を返します。続く引数が同じ型のとき、型を1回だけ書いてa, b intと省略できます。a int, b intと書いても同じ意味です。型が混ざるときは同型が連続する部分だけ省略し、それ以外はそれぞれ型を書きます。
func add(a, b int) int { // a int, b intと同じ
return a + b
}
func mix(a, b int, factor float64) float64 { // a int, b int, factor float64
return float64(a+b) * factor
}
// mix(1, 2, 1.5) → 4.5複数戻り値とerror
戻り値の型を(T1, T2)のように並べると、複数の値を返せます。呼び出し側はv, err := f()のように左辺の変数の数だけ受け取ります。
func divide(a, b float64) (float64, error) {
if b == 0 {
return 0, fmt.Errorf("division by zero")
}
return a / b, nil
}
v, err := divide(10, 2)
if err != nil {
return err
}defer
deferは関数がreturnするとき(正常終了・panicいずれも)に実行する処理を登録する文です。分岐やループの制御ではなく、関数スコープで後片付けを書くための構文です。
f, err := os.Open(path)
if err != nil {
return err
}
defer f.Close()複数のdeferは後入れ先出しで実行されます。引数はdefer登録時に評価され、関数終了時ではありません。ループ内でdeferを書くと、登録は繰り返されますが実行は関数終了時まで遅延します。
for i := 0; i < 3; i++ {
defer fmt.Println(i) // 登録時のiをキャプチャ → 終了時に2, 1, 0の順
}if初期化文との組み合わせ
呼び出しとerrのチェックを1行にまとめるときにif初期化文を使います。
if _, err := strconv.Atoi(input); err != nil {
return err // inputが整数でなければ終了
}名前付き戻り値
戻り値の型の前に名前を付けると、その名前が関数内の変数として使えます。
func split(sum int) (x, y int) {
x = sum * 4 / 9
y = sum - x
return // この時点のx, yを返す(return x, yと同じ)
}戻り値に名前を付けているとき、値を書かないreturnはnaked returnと呼ばれ、名前付き戻り値をそのまま返します。名前付き戻り値はドキュメントとして有用ですが、長い関数では何を返しているか追いにくくなります。defer内で名前付き戻り値を書き換えるとreturnの結果が変わるため、意図しない場合があります。
可変長引数
末尾の引数を...Tと書くと可変長引数になります。呼び出し側は値を列挙するか、スライスを...付きで渡します。
func sum(nums ...int) int {
total := 0
for _, n := range nums {
total += n
}
return total
}
sum(1, 2, 3)
sum([]int{4, 5}...)値渡しと関数値
関数は第一級の値です。引数は値のコピーであり、呼び出し側の変数は関数内で引数を書き換えても変わりません。関数型の変数に代入して、別名から呼び出せます。
func double(n int) int {
m := n
n = 0 // コピーnを書き換えても呼び出し側には及ばない
return m * 2
}
x := 10
y := double(x) // yは20
// xは10のまま
var fn func(int) int = double
z := fn(3) // zは6関数リテラル
funcに名前を付けず書いた式が関数リテラル(無名関数)です。第一級の値なので、変数に代入してから呼び出せます。
add := func(x, y int) int {
return x + y
}
sum := add(1, 2) // 3即時呼び出し
関数リテラルの直後に(引数…)を付けると、変数に代入せずその場で呼び出せます。
n := func(x int) int { return x * 2 }(3) // 6クロージャ
関数リテラルは外側の関数で宣言した変数を参照できます。参照した変数はリテラルと共有され、リテラルが参照可能な間は保持されます。
func counter() func() int {
n := 0
return func() int {
n++
return n
}
}
next := counter()
v1 := next() // 1
v2 := next() // 2func (c Counter) Inc()と値レシーバで書くと、呼び出し元のc.nは増えません。メソッドは型に紐づく関数で、値レシーバとポインタレシーバでメソッド集合が変わり、インターフェース実装の可否にも影響します。
メソッド宣言
メソッドは型に紐づく関数です。レシーバは関数名の前に書きます。
type Rect struct{ W, H float64 }
func (r Rect) Area() float64 {
return r.W * r.H
}レシーバ名は型の短い別名として使われます。同じ型のメソッド集合内で一意である必要があります。
値レシーバとポインタレシーバ
レシーバは値Tまたはポインタ*Tです。
func (r Rect) Perimeter() float64 {
return 2 * (r.W + r.H)
}
func (r *Rect) Scale(f float64) {
r.W *= f
r.H *= f
}値レシーバではメソッド内の変更はコピーに対してのみ有効です。呼び出し元の値を変更するにはポインタレシーバを使います。
代入可能な値へのアドレス取得
変数pが代入可能なら、値型のレシーバメソッド呼び出しp.Method()は、コンパイラによって(&p).Method()と解釈されることがあります。
type Rect struct{ W, H float64 }
func (r Rect) Area() float64 { return r.W * r.H }
func (r *Rect) Scale(f float64) { r.W *= f; r.H *= f }
r := Rect{W: 3, H: 4}
r.Scale(2) // 代入可能 → 実質 (*Rect).Scale
fmt.Println(r.Area()) // 24一方、リテラルやmapの要素など代入可能でない値に対して、ポインタレシーバのメソッドは直接呼べません。
// Rect{W: 1, H: 1}.Scale(2) // コンパイルエラーポインタと値の使い分け
次のようなときはポインタレシーバが使われます。
- メソッドがレシーバのフィールドを変更する
- レシーバが大きく、コピーを避けたい
- レシーバがスライスやマップなど、内部データを変更する型である
値レシーバは小さな不変型や、値型として扱いたいときに向きます。大きな構造体では値レシーバのたびに全体がコピーされるため、読み取り専用でもサイズが大きければポインタレシーバを検討します。
ポインタレシーバ*Tのメソッドは、レシーバがnilでも呼び出し自体は可能です。メソッド内でフィールドにアクセスするとパニックになります。値レシーバのメソッドをnilの*Tから呼ぶと(*p)に展開されるため、フィールド参照時にパニックします。
var p *Rect
// p.Area() // 値レシーバ: (*p) の展開で nil ならパニック
// p.Scale(2) // ポインタレシーバ: 呼び出しは可能だが、フィールド参照でパニックレシーバ型の一貫性
同一の型に対して、値レシーバとポインタレシーバのメソッドを混在させないのが慣習です。混在するとメソッド集合が呼び出し側の型(Tか*Tか)によって変わり、インターフェース実装の可否にも影響します。値型Tのメソッド集合には値レシーバのメソッドが入り、ポインタ型*Tには値レシーバとポインタレシーバの両方が入ります。
メソッド式とメソッド値
メソッドは関数値として扱えます。
r := Rect{W: 3, H: 4}
fn := r.Area // メソッド値: レシーバがあらかじめ結び付いている
fmt.Println(fn())
area := Rect.Area // メソッド式: レシーバを第1引数で渡す
fmt.Println(area(r))埋め込みとメソッド昇格
構造体に別の型を埋め込むと、その型のメソッドが昇格して外側の型から呼び出せます。埋め込みは継承ではなく、フィールドとして内側の値を持ち、名前を省略してメソッドへ届ける仕組みです。
type Engine struct{}
func (e Engine) Start() {}
type Car struct {
Engine
}
var c Car
c.Start() // Engine.Start が昇格外側の型に同名メソッドがある場合、外側が優先されます。インターフェースの埋め込みはメソッド集合の合成であり、構造体の埋め込みとは別の仕組みです。埋め込みはフィールドとメソッドの昇格であり、型の置き換え(代入可能性)を生みません。CarをEngineとして使うことはできません。
概要
組み込み関数は事前宣言されており、インポートなしで使えます。スライス・マップ・チャネルの確保や長さ操作など、言語の基本操作を担います。
newとmake
new(T)は任意の型Tのゼロ値を置いた領域を確保し、そのアドレス*Tを返します。メモリの置き場には、関数の呼び出しに合わせて使うスタックと、関数をまたいで値を置けるヒープがあります。ヒープ上の不要な領域はガベージコレクションが回収します。どちらに置くかはGoが決め、プログラマが指定する必要はありません。newはヒープ専用の確保ではありません。
p := new(int) // *int、*p == 0makeはスライス・マップ・チャネルだけを対象に、内部構造を初期化したTそのものを返します。ポインタではありません。これらの型は内部構造の初期化が必要なためnewではなくmakeを使います。new([]int)はnilスライスへのポインタを返すだけで、要素を足せる状態にはしません。
s := make([]int, 0, 10) // len=0, cap=10
m := make(map[string]int)
ch := make(chan int, 1)lenとcap
lenは配列、スライス、マップ、文字列、チャネルの長さ(またはバッファ内の要素数)を返します。スライスと配列ではcapが容量を返します。
s := make([]int, 2, 5)
fmt.Println(len(s), cap(s)) // 2 5
m := map[string]int{"a": 1}
fmt.Println(len(m)) // 1appendとcopy
appendは新しいスライスヘッダを返します。cap不足時は新しい元配列が割り当てられることがあります。戻り値を呼び出し元の変数へ代入しないと、呼び出し元から見た長さは変わりません。再割り当て後も古いヘッダを使い続けると、別の配列を指している可能性があります。
s := []int{1}
s = append(s, 2, 3)
s = append(s, []int{4, 5}...)copy(dst, src)はdstへ要素をコピーし、実際にコピーした個数を返します。コピー数は両者の短い方の長さまでです。
dst := make([]int, 2)
n := copy(dst, []int{10, 20, 30})
fmt.Println(n, dst) // 2 [10 20]deleteとclear
delete(m, key)はマップからキーを削除します。キーが無くてもパニックにはなりません。
m := map[string]int{"a": 1}
delete(m, "a")
delete(m, "missing") // 安全clear(Go 1.21以降)は型によって動きが違います。マップではすべてのエントリを削除して空にします。スライスでは各要素をゼロ値にし、長さlenはそのままです。
m := map[string]int{"a": 1, "b": 2}
clear(m)
fmt.Println(len(m)) // 0
s := []int{1, 2, 3}
clear(s)
fmt.Println(s, len(s)) // [0 0 0] 3close
close(ch)はチャネルを閉じ、「もう送らない」ことを示します。送信側が呼ぶのが慣習で、rangeの終了条件にもなります。閉じたチャネルへの送信はパニックです。
ch := make(chan int, 1)
ch <- 1
close(ch)
for v := range ch {
fmt.Println(v) // 1
}minとmax
minとmax(Go 1.21以降)は、比較可能な同じ型の引数のうち最小・最大を返します。
fmt.Println(min(3, 1, 2)) // 1
fmt.Println(max(3, 1, 2)) // 3panicとrecover
panicは実行を中断し、recoverはdefer内でその中断から復帰します。想定できる失敗は通常errorで返し、panicはプログラムのバグや回復不能な状態向けです。